SL9

風も動かない熱帯夜
九十四年の夏
その夜も寝苦しくって
夢の誘いも来なくて
太ったテレビから
流れた信じられないnews
蝉が一度だけ鳴いた

二十一歳の光が
何度も映し出されて
聞いたことのない名前の
彗星が空高かして
画面に入りきらない
木星に衝突したんだ
思わず西の空見上げた

遠く春か
宇宙から呼びかける
散らかった六畳間への
言葉のないmessage
夢も希望もどこか
リアルじゃなかった僕は
気の抜けた生ぬるい
氷を飲んで
明かりを消したんだ

夜空は何も変わんない
いつものように見下ろして
歩き出そうとしない僕を
臆病者だと笑う
見えもしないものでも
想像して行動すりゃ
望む人の手の中にある

遠く春か
宇宙から呼びかける
散らかった六畳間への
言葉のないmessage
感情が走り出す
忘れていた未来へのimage
ざわめいた胸の鼓動を
抱えて夜が明けていく

遠く春か
宇宙から呼びかける
遠く春か
宇宙から呼びかける