あなたをあいしたこのくちびるが
こぼしつづけたことばのかけら
つめたいみみはそのこころまで
とどけることさえできないの
よるのさざなみゆれるこのはに
うかべたちのもじしたためれば
まっかなちいさないとうしいみを
はらんでそだててゆけますか
てんがやみにだかれるおうまがとき
ふたりはであった
おうごんのくもをさき
いなずまはたからかに
ビロードのとばりのなかつつまれた
ものがたりはまくをあけて
おわりのないおとぎばなしはないこと
しっているけど
だれにもきかせることなく
このむねにだけきざんでください
あすのゆめなどいまわしいだけ
とどまるばしょはただいまでいい
あえぬあなたはしびともおなじ
ふれえるときだけしんじつでしょう
てんがちじょうにかたむくおうまがとき
ふたりはうまれた
くろいほしのかんむり
きぬのかみちらばって
おちるところまでおちたこいびとたちが
うけるあいのせめくに
すべてをこがしてくちはてることも
いとわないけれど
たしかにふたりいきたあかし
かさねるみにのこしてください
てんがやみにだかれてくずれるとき
わたしはほうむる
くだけたつきのかがみ
きおくをつなぎあわせ
ビロードのとばりのなかにかえった
ものがたりにかぎをかけて
わすれられるおとぎばなしはないこと
しっているから
だれにもきかせることなく
このむねにだけきざんでゆくだけ